お灸を知る・使うせんねん灸 moxaブログ

2025.09.25

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昔ながらの「お灸」
「しょうが灸」「にんにく灸」「しお灸」「みそ灸」


「お灸」には、「もぐさ」を直接すえるだけでなく、「お灸」と肌の間に何かをはさむ「隔物灸(かくぶつきゅう)」という工夫があります。昔の人々は身近な食材を使って、熱の伝わり方を調整する工夫をしてきました。今回はその中から「しょうが灸」「にんにく灸」「しお灸」「みそ灸」をご紹介します。

「しょうが灸」とは
しょうがを輪切りにして肌の上に置き、その上に「もぐさ」をのせて火をつける「お灸」です。「もぐさ」の熱がしょうがを通してじんわりと伝わります。

この「しょうが灸」は、中国・明代に医師の張介賓(ちょうかいひん)がまとめた医学書『類経図翼(るいけいずよく)』(1624年)にすでに記録されています。『類経図翼』は、鍼灸の理論を整理し、当時実際に行われていた「お灸」の方法をまとめた本であり、「しょうが灸」もその中で紹介されています。
“單用生姜切薄片,放痔痛處,用艾炷於姜上灸三壯,黃水即出,自消散矣”
しょうがを切って痛むところに置き、その上に三壮灸をすれば汁が出て自然に消える
家庭の工夫ではなく、当時の専門書にも位置づけられていた歴史ある「お灸」の方法のひとつといえます。

「にんにく灸」
にんにくを輪切りにして肌の上に置き、その上に「もぐさ」をのせて火をつける「お灸」です。にんにく特有の香りが立ちのぼり、熱がにんにくを通してじんわりと伝わります。
この「にんにく灸」は、中国の古典医学書にもたびたび登場します。中国・明代中期の医師の徐春甫(じょしゅんぽ)がまとめた医学書『古今医統大全(ここんいとうたいぜん)』には、にんにくを切り、患部に当て、その上から灸する方法が記されており、さらに清代の『医宗金鑑(ぎょさんいそうきんかん)』にも、「にんにく灸」が登場します。このように、「にんにく灸」も家庭の工夫にとどまらず、古くから専門の医書に位置づけられてきた伝統的な「お灸」の方法のひとつです。

「しお灸」とは
「しお灸」は、古くから親しまれてきた「お灸」のひとつです。名前の通り塩を用いるのが特徴で、特にお腹まわりの養生に用いられることが多かったと伝えられています。へその上に塩を盛り、その上に「もぐさ」をのせ火をつける方法が知られており、暮らしの中で工夫されながら受け継がれてきました。「もぐさ」の温熱に塩を組み合わせることで、やわらかな温かさを感じられるのも特徴です。

「みそ灸」
みそを小さくだえん形にもり、肌の上に置き、その上に「もぐさ」をのせて火をつける「お灸」です。みそを間にはさむことで、「もぐさ」の熱が直接肌に伝わらず、やわらかな温かさがじんわりと広がります。その上みその香りがほんのりと広がり、和みます。

「しょうが灸」「にんにく灸」「しお灸」「みそ灸」はいずれも「隔物灸」と呼ばれる「お灸」で、身近な素材を活かした昔ながらの方法です。熱の伝わりを調整しながら、暮らしの中でつちかわれてきた知恵が形になったものといえるでしょう。こうした「お灸」の工夫をたどることで、先人たちが日々の生活に寄りそいながら養生を実践していた姿が浮かび上がってきます。

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