大きく開いた口から森の香りを吹き出しているのは豊かな森に恵まれたドイツ東部、チェコ国境に近いエルツ地方を代表する木工芸品 けむり出し人形です。
おどろいた様に大きく口を開いた女医さんの口から吹き出してくる森の木の香り。
さわやかですがすがしい香りです。
豊かな森から生まれるあたたかみのある木の人形は森の中に点在する小さな村の、小さな工房でひとつひとつ手づくりで生れます。
マツ トウヒ メープル ポプラなど森の木を小さく小さく割り、けづり、伝統の技術でていねいに仕上げられ、作り手の手のあたたかさまで伝わってくるような素朴さが長く愛されてきた秘密なのです。
晩秋を迎えると、ドイツでは各地でクリスマスマーケットが開かれますが、このエルツ地方ではけむり出し人形は、ドイツの木工玩具として良く知られるくるみ割り人形と並んで古くからクリスマスには人気の人形なのです。
森につつまれるように街や村が点在するこの地方ではクリスマスにはけむり出し人形が吹き出す森の香りでクリスマスを清めるという習慣が19世紀の始めにはもうあったようでクリスマスにはおなじみの人形なのです。
けむり出し人形は胴体をはずすと、木の香りをのせるお皿があり、そこに木の香りをとじ込めた専用のお香をのせ、火をつけて胴体をもどすと人形の口から煙がお部屋に広がります。
けむり出し人形はちょっと、いかついくるみ割り人形とは違って、さまざまなキャラクターが人気の秘密。
ドクター、ナース、女医さん、コックさん、パン職人、魔女もいます。
どこにでもいるキャラクターがけむり出し人形をいっそう親しみやすくしているのです。
コロナ禍でいつの間にかクリスマスというあわただしい年の瀬、いよいよ今年もあと一週間です。お正月には寒波のニュースもきこえてきます。
いそがしい毎日、足許から寒さはやってきます。