晴れ上がった冬日の中で、ハラハラと散りゆく銀杏と入れ替わるかのように咲き始めた さざんか。
春の若芽のいぶきに始まり、したたるみどり、そして林中を一気に染めた紅葉も終わりを告げ、樹々が葉を落とした今、すっかり明るくなった林の中でその一角で、はなやかに咲くさざんかの花。
さざんかは「山茶花」と書きますが「山茶」とは中国ではツバキのこと。花が似ているところからか、日本でこの山茶に花の字をつけて「山茶花」となりました。
はじめは「さんざか」と呼ばれていたのが、江戸時代に「ん」と「ざ」が入れ替わり、いつしか「さざんか」と呼ばれるようになったとか。
名前はいかにも中国からやってきた花のようですが、さざんかは日本原種。
江戸時代、長崎からヨーロッパに伝えられ、ひろく愛されるようになりました。そのためにさざんかの学名も英名も「sasanqua」とされているのです。
さざんかは童謡にもうたわれるようによく垣根に植えられ、きれいに刈り込まれて緑の葉にしがみつくように花をつけている様子をよく見かけますが本来は何メートルにも成長する樹なのです。
石川丈山によって開かれた京都の詩仙堂にはかつて庭を半分埋めつくすようなさざんかの巨木があったそうですが、その花は白。本来、野生のさざんかの色は白だったのですが、江戸時代には多くの園芸品種が生まれました。
そのひろい人気ぶりを長崎の平戸から帰国したドイツの植物学者ケンペルは「日本のバラ」と呼んで紹介しているのです。
深まりゆく冬の林の中で花をつける数少ない花とあって訪れる野鳥も多く、さざんかは今が主役の花なのです。