香り高いうす味のおだしの中に、そばにくるまるようにして、にしんの片身が器からはみ出さんばかりに存在感を示しています。
にしんそばには、これに薬味の刻みネギがそえられているだけ 。
そばをいただくうちに甘辛く時間をかけて煮上げられたにしんの味が、だしの中にとけだしいっそうそばのおいしさを引きたたせています。
このにしんとそばの組合せは京都ならではのもので京都では相性のいい食べ物として大晦日の年越しそばもこのにしんそばではなくてはという人も多いのです。
京都には昔から出あいものというコトバがあります。2つの意外な食材が季節によって出逢うことでお互いがおいしさを引きたてあうことで思いがけないおいしい食べものになること。
春のたけのことわかめの若竹煮、夏の身欠きにしんとなすのにしんなす、秋の棒だらと海老芋、冬のブリ大根などなどですが、京都人にとってはにしんそばは通年の出逢いものなのです。
千年の王城の地 京都は海から遠く新鮮な魚は届くことなく魚といえば浜塩の魚か、上干しと呼ばれるカチンカチンに乾燥した魚でした。
江戸時代、北海道開発が進み、こんぶ、身欠きにしん、棒だら、ごまめなどが届くようになり、京の伝統の技術で独特の京の味が生まれました。
にしんそばも150年近く前に生まれ、今では京都らしい味のひとつにあげられているのです。