まことにふしぎなお餅です。
プクッとふくらんだ紅白のお餅はおめでたい亀のカタチ
頭もあります。足もあります。よく見ると甲羅には亀甲紋までくっきりうかんでいます。
ふつうお餅を焼くと、そのふくらみ具合はお餅まかせ、お餅のおもいのまま一個一個自由にふくらみます。
それを焼く前のお餅にあらかじめ切り込みを入れてお餅のふくらみ具合をコントロールすることで、ふっくらした亀は生まれるのです。
この亀になるお餅の焼く前はうすく切ってあり、京都でいう おかき、いわゆるカキ餅なのです。
お正月 神様にお供えした鏡餅をいただく時、鏡餅は神聖なものとされ、刃物を使わず、割ったり欠いたりして小さくしていただいたところからカキ餅の呼び名が生まれたのです。
うすく切ったカキ餅は乾燥すると保存がきくところから江戸時代には戦の携帯食や非常食として用いられたそうで、京都伏見の旧家に非常食として保存されていた江戸時代のカキ餅は、今と同じ短冊型で200年近くたった今もちゃんと食べられたそうです。
亀の紋様の入ったカキ餅を火にかけた網の上に置くと、ほどなくして、ゆるやかに反り返って、やがてプクッとふくらんできます。
まずは甲羅がまーるくなり、足がふくらみ最後に頭がふくらんで完成です。
思わず見とれるほど見事な焼きあがり、何個焼いてもみんなかわいい亀のカタチに焼きあがるという見事さ。
ひっくり返すと火にあたっていたほうは、こんがりとおいしそうに焼けています。
焼き上がったお菓子とされてきたカキ餅に、焼く楽しさをプラスしたこの亀のカキ餅はお餅の焼け具合をコントロールするというアイデアを見事にカタチにしたおかきの老舗のヒット作なのです。