8月も終わりというのに数日前まで連日猛暑日が続き、ぐったりの人間とは違って、植物は自然の移り変りを正確に読み取り秋に向かっています。
「まだ この暑さなのに」と思わずつぶやいてしまいました。早やススキが穂を出しています。稲穂がふくらみはじめた緑あざやかな稲田をバックに時折吹く風にゆれているのです。
ススキは秋の七草のひとつとして、万葉集にもあげられているだけあって、その成長過程がすべて季語になっています。
穂の出る前のシャープなみどりの葉は夏の季語で青芒。穂が出はじめると穂芒。そして花が白くなると尾花と名前が変わり、ここまでは秋の季語。すっかり枯れると枯尾花で冬の季語になるのです。
ススキの別名はカヤ。秋 花が散ると刈り取り、カヤ葺きの屋根の材料として欠かせないもの。かつては集落ごとにカヤ場とかカヤ畑とか呼ばれるカヤの群生地があり、毎年秋になるとカヤを刈り、何十年に一度のカヤ葺き屋根の葺き替えに備えてきたのです。
かやぶきの里で知られる京都の美山、国の伝統的建造物群保存地区に指定された集落では50戸のうち、7割もが今もカヤ葺きの民家として残っており、日本の原風景を求めて多くの人が訪れます。
カヤ葺きの屋根の民家は半世紀くらい前までは、どこででも見ることができました。カヤ葺きの厚さ4〜50センチもあろうかという屋根は夏の日光をさえぎり、冬の寒さを防ぐ天然のエアコンの働きをするすぐれもの。
しかしカヤ葺きの屋根は寿命があるため、何十年に一度は屋根の葺替えの必要があり、その時は村中総出で人海戦術で何百束ものカヤを屋根に運び、葺替えられてきたのです。