林の中に淡い色ながら、ひときわ存在感を見せて咲くナツスイセンは、いっとき炎暑を忘れさせてくれるかのような美しさです。
スイセンと呼ばれていますが、ナツスイセンはヒガンバナの仲間。春、スイセンのような細い葉をたくさん伸ばしますが、夏を迎える頃に葉はすっかり枯れます。
そして本格的な夏の訪れを待っていたかのように地下の球根から長い茎をスーッと伸ばしてその先に花をつけます。
花のカタチがユリの花に似ており、葉が枯れたあとで花をつけるところから「復活のユリ」とか「サプライジングリリー」とか「裸百合」とかの名もあります。
本来は中国原産で日本には早く渡来し、いつしか野生化したもので帰化植物の一種です。
ヒガンバナと同じようにその球根は毒を持っていますが。すりつぶして、はれものにあてると効果があるとされて古くから利用されてもいます。
ナツスイセンはその花があまりにも美しいところから、中国では「傾城花」という呼び名もあります。「傾城」とは絶世の美女を表現するコトバ。
「養生訓」で知られる貝原益軒は植物学者としても知られており、江戸時代の花を紹介したその著書「花譜」にナツスイセンについて「冬春 葉しげり、夏月に葉かる。五六月 茎出て、花生ず。花あるとき、葉なし。花尤も下品なり」(花譜巻の中)と紹介しています。
益軒さんにはナツスイセンの花は品がないと思われていたようです。