端午の節句に欠かせない菖蒲、しょうぶはあやめとも呼ばれますがカキツバタも含めてアヤメ科に属しています。
そのアヤメ科の中で一番早く咲くところからついた名前が「一初」 いちはつは日本古来のあやめの仲間と違って中国生まれ。その大きな青紫の花弁の内側に鶏のトサカのような白いヒダがあるのが特徴です。
花丈は少し短く、水辺に咲くカキツバタなどと違って乾燥した土地を好み根が強くはるところからかつては、防風のためや厄除けに屋根の上に植えられることもありました。
京都で「一初」の名所として知られる御霊神社は平安遷都以前から賀茂川の西側の氏神として親しまれてきたのです。かつて御霊神社には賀茂川からの水路があり、境内のお堀には美しく咲くカキツバタが初夏を彩っていました。
この御霊神社の門前で生まれたのが、国宝の「紅梅白梅図屏風」「燕子花図屏風」で知られる江戸時代の琳派を代表する尾形光琳。
燕子花図屏風の金色に映えるカキツバタの群落は、幼い頃光琳がずっと目にしていたこの御霊神社のお堀のカキツバタがヒントになっていたのではとも伝えられています。
しかしいつしか、賀茂川からの水がとだえ、カキツバタも姿を消してしまいました。
戦後、花のない堀に心を痛めた氏子たちによって、水中でなくても育つ「一初」が植えられ、今では4000株もの一初が毎年御霊神社の初夏を彩っています。
いずれあやめかカキツバタのコトバもある通り、あやめの仲間は京都のあちこちで次々と花をつけ初夏の訪れをつげているのです。