一枚一枚がていねいに手焼きされた「おかき」はその焼きあがったカタチといい、こげ具合、ふくらみ具合をそれぞれが主張していて思はず見とれる美しさです。
おかきとは、かつてお餅は神さまへのお供えものでした。そのため、そのおさがりをいただく時、刃物を使うことはタブーとされ、鏡餅を割るか、手で欠いて小さくしていただいたところから、かき餅と呼ばれてきました。
そのかき餅を京都では京ことばに多い「お」をつけ短くして「おかき」と呼ぶようになったのです。
おとうふ、おやき、おばんざい、おだいなどと同じく、宮中の女房言葉からきた「お」をつける京ことば独得のいいかたです。
「おかき」はかつては、京都ではおやつの代表でもありました。
寒に入るとお餅屋さんに「おかきにしますので寒餅をついとくれやす」と、お餅の注文がたくさんあったそうです。
つきたてのお餅が少し固くなった頃、うすくうすく切って一面にひろげ、寒の冷え込みの中でカラカラに乾燥します。それを保存して一年間ずっと焼いておやつにしていたのです。
このおかき、昔は保存食 非常食でもあったそうで、京都の旧家には江戸時代につくられた おかきが和紙に包まれて100年をこえて保存されていたというお話もあります。
おかきは、もとはといえば100%お餅なので保存食というのもうなづけるはなし。
「おかき」というやさしい呼び名にふさわしく、このおかきは一枚一枚の大きさはうんと小さく、いかにも京都のおかきといった上品な大きさ、高度に洗練された美しさの京菓子の世界でも違和感のない姿なのです。
近江米のもち米を使って、シンプルにお餅の味へのこだわりは、そのパッケージに農家が秋、収穫した新米を出荷する時に使う紙の米袋をモチーフにしていることでもうかがえるのです。