銅線をねじる、ひっかける、ひっぱる、又ねじる。ひたすら指先に神経を集中し力の入れかげんだけで、ただの銅線が六角形のかたちになり、やがて立方体になる。
道具のメインは指先、釘を打ちつけただけの網台と呼ばれる作業台に置いた設計図の上で、銅線を1回ねじり、2回ねじりとつづけるなかで美しいい亀の甲のような六角形が次々とつながってゆく。
針金をねじってつくる金網は中国から伝えられ、平安時代には香炉火屋(こうろほや)などとして使われてきたという歴史がありますが、京金網は、主に京料理を支える調理器具として独自の進化をとげて今日に至っているのです。
京名物の湯とうふをすくう豆腐すくいや茶こしそして京料理や京菓子に欠かせない曲げ輪にステンレスや馬毛を張った、うらごし器などをつくることで京料理の世界と深くつながってきたのです。
ところが、昭和30年代プラスチックの調理器具が登場し、京都の30軒をこえる金網細工のお店はどんどん減って今では4~5軒を残すのみ。
しかし近年手仕事のよさが注目されるようになり、又茶こし、豆腐すくいなど暮らしの道具として、その美しさが人気を呼んでいます。
京金網の美しさは今では世界的にひろがり、海外でも展示会が開かれフランスのワイヤーアートの職人さんが弟子入に来日するほど。
今では世界遺産となった和食を常にリードしてきた京料理のきびしい要求にこたえつづけるなかでみがかれてきた京の金網細工はまさに用の美、とぎすまされた美しさが今、注目を集めているのです。