京都という町は、時にとんでもなく いさぎよいものに出逢える町です。
冬の訪れを知らせる北山しぐれが始まる頃から3月頃までの間だけ売られる大納言もそのひとつ。
創業 文化5年という老舗のこだわりの京銘菓です。
大納言とはあづきの中で大粒で色つやもよく、小豆の名産地 京都丹波の中でも最上級のあづき丹波大納言から名づけられたもの。
大納言の名は炊きあげた時、皮がやわらかいにもかかわらず、炊いている間にお腹が割れにくいことから。かつてお公家さんは武士と違って切腹することがなかったことから、お公家さんの官位の中でも最上位のひとつ大納言と名づけられたといわれています。
京菓子は餡がいのちといわれますが、餡はいわばお店の顔。一軒一軒が秘伝の炊きかたで炊くものでしたが、今では餡屋さんという手間のかかる餡を専門で炊いて、お菓子屋さんに届けるお店があることでもわかる通り、必ずしもお菓子屋さんが炊いているわけではなくなりました。
しかし老舗のお菓子屋さんでは当然餡を毎日炊くことで家伝の味を守っています。
この大納言も、お店の奥で手間をかけてコトコト炊上げた餡を何の加工もせず、そのまま竹を割った容器に入れただけ、まさにお菓子屋さんの素顔そのものといえるのです。
新あづきの収穫が終わる頃から、秋に仕入れたあづきがなくなるまでしか買うことができない期間限定の味です。
餡というものは普通は皮につつまれたり何か加工されているものですが、この大納言はまさに餡、まじり気なしの餡そのものが口あたりといい、ほどよい甘さといい、思わずさすがといいたくなる老舗の逸品なのです。