京菓子 州浜のそら豆は、空豆独得のちょっとはねたようなカタチがじつにリアルでありながらやさしさにあふれたカタチのお菓子です。
州浜というのは京菓子のなかのひとつで大豆と青豆をきな粉より少し浅く煎って、大豆の風味を残すように挽いたすはま粉に水あめと砂糖を加えてよくねって、カタチしただけの極めてシンプルな工程のお菓子。もちっとした食感と煎った豆独得の香ばしさが人気です。
ところで京菓子のジャンルのひとつの呼び名である州浜は平安時代に生まれたコトバ、中国の伝説上の海に浮かぶおめでたい蓬莱山のある島の浜辺にできる三角州のカタチからとか。後にはおめでたい意匠として州浜柄と呼ばれ、又 家紋になったり、さまざまな工芸品のカタチにも使われてきました。
菓子としての州浜は鎌倉時代に生まれたとされ、その断面が州浜のカタチをしているのが特徴です。
そしてその材料として使われたのが豆の粉と水あめだったところから、後にこの材料でつくられる京菓子は州浜と呼ばれるようになりました。
茶道とともに発達してきた京菓子は下ごしらにはさまざまな工程はあっても、職人の手に渡るとあとは時間の勝負、熟練の手ワザであっという間に洗練されたカタチが生まれます。
目と口と五感で味わうといわれる京菓子にあって、そのカタチの美しさは必須なのです。
この州浜のそら豆は江戸時代創業 お茶と深くかかわってきたお店は、祇園祭の宵山の日だけ発売される「行者餅」や節分の日限定の「法螺貝餅」で知られる名店ならではのカタチの美しさと、口に含んだ時にひろがる豆のこうばしい香り、中につつまれたこしあんのひかえ目の甘さが絶妙なハーモニーを生み出しています。