丹波栗が顔を出す頃になると今年も栗入り麩まんじゅうがお店に並びはじめました。
いつからというのではなく、その年その年の栗の具合でお店に並ぶ日が決まり、栗の季節が終わる頃には姿を消す期間限定「栗入りの麩まんじゅうが出はじめたのでもう秋かなぁ」と京の人は知るのです。
麩まんじゅうというのは、本来料理用の生麩をつくるお店で出来立ての生麩に青のりを少しまぜ、その生麩でこしあんをつつみ、蒸したものを笹の葉でくるんだもので笹巻きとも呼ばれています。
栗入りの麩まんじゅうとは、こまかくくだいた栗の実を生麩にねり込み、中につつむこしあんにも少しあらくくだいた栗の実がはいっていて口にすると笹の葉の香りの中にひろがる栗の味が秋を実感させてくれるのです。
京都には、今も麩屋町という通りが残っていることでもわかる通り、お寺が多く精進料理や京料理に欠かせない生麩をつくるお店がかつてはたくさんありました。
江戸時代、滝沢馬琴は「京にて味よきもの。麩 湯葉 芋 水菜 うどん のみ」と記しているように第一にあげられた麩は水をねり込むものといわれるほどその工程はすべて水とのかかわりの中でつくられます。
三方を山に囲まれた京都には街中のあちこちに名水と呼ばれるおいしい地下水が湧出していたことで麩も湯葉もその水から生まれたのです。
麩は小麦粉に少量の塩をまぜ、ひたすら練り水で洗って澱粉を全て洗い流すと小麦のたんぱく質グルテンだけが残ります。
これが麩の原料、これに餅粉や小麦粉をまぜ青のりや粟、よもぎなどをまぜ伸ばして型に入れ大釜でゆがくと出来上がるのが生麩なのです。
あるかなきかの麩の味はだから水の味ともいわれるのです。
笹の葉につつまれた栗入りの麩まんじゅうは笹の葉をひらくとほのかな笹の香りの中に栗の実のかたちをした麩まんじゅうが顔をだします。
プチプチと生麩にまじる栗の実の色と味が秋を知らせてくれます。