清流の上に大きく枝を伸ばす青もみじの合間から見える清滝川から「キロキロキロー」と鳴く河鹿の鳴き声が水音にまじってきこえてきます。
奥嵯峨から、さらにひと山こえたところに位置する清滝は古くから、その緑にかこまれた清流を求めて訪れる人も多く、又、江戸時代に入ると「伊勢へ七たび、熊野へ三たび、愛宕まいりは月まいり」というコトバもある通り、愛宕神社への参詣の人でにぎわってきたところです。
京都の町家の台所、おくどさんの上に必ず貼ってある「火迺要慎」のお礼で知られる愛宕神社は火伏せ防火の神さまとして京都盆地の西の一角にそびえる標高924mの愛宕山の山頂近くにあり、全国に800をこえる愛宕神社の総本山でもあるのです。
かつて修験道七高山のひとつに数えられた愛宕神社は今も二の鳥居のあるふもとの清滝から急坂を4キロほど歩いて登ってやっと到着できるなかなかのところです。
この愛宕さんには「3才詣り」というお詣りの仕方があります。
赤ちゃんが3才までに愛宕さんにお詣りしておくと一生火難にあわないというもので、京都ではきわめてあたりまえのこととして、愛宕山には登山家にまじって、いつも若い夫婦が交互に赤ちゃんを背負ってとか、おじいちゃんおばあちゃんも含めて一家でヨチヨチ歩きの小さな子どもをなだめながらお詣りする姿が見られます。
清流として知られる清滝川は上流には紅葉で知られる高雄があり、川は清滝を通って保津川へと急な山あいを流れ下っています。
清滝の水くみよせて ところてん 芭蕉
かつて芭蕉の句も生まれた清滝は今も愛宕さんへの登山客が通りすぎると、静寂の中にホトトギスと河鹿の合唱が水音にまじってきこえる万緑の別天地です。