名水百選にもえらばれている宮水は、日本を代表する灘の生一本の産みの母でもあるのです。
灘と二分する酒どころ、京都伏見の酒はミネラル分も少なく、軟水がつくり出すやさしい女性的な味なのに対して、灘の酒が男酒とも呼ばれるのは、六甲山系の地中深く花崗岩の岩盤の間を流れてきた宮水によるのです。
宮水は、リン・カルシウムなどを多く含み、さらにこのあたりは大古、海の中だったこともあって、かすかな塩分もふくんでいることで酵母の発酵を促進するため、スッキリ辛口の芳醇な酒を生み出したのです。
かつて寒の内につくられた日本酒は夏を越すと火落ちと呼ばれ味が悪くなったのですが、このあたりの灘の酒は、逆に秋を迎えると味がぐんと芳醇になるところから秋晴れと呼ばれていました。
そして、その秘密は宮水にあることがつきとめられ灘の造り酒屋は、こぞってこの宮水を使って仕込みを始め灘は日本一の酒どころとなったのです。
宮水の名前は、今ではお正月の福男えらびのダッシュで知られている西宮神社のすぐ近くの限られた地域でのみ湧き出すために、西宮の水と呼ばれていたのがいつしか宮水となったのです。
宮水の湧き出す地域は大切に管理され、発祥の地にある梅ノ木井戸も今はフタがあり、見ることは出来ませんが、周囲には良く知られる灘の酒倉の宮水井戸が並び一帯は宮水庭国として整備され灘の男酒は守られているのです。