京都市内の中心にあって東西700メートル南北1300メートルの広大なスペースに点在する建物とのコントラストが美しい世界をつくる京都御苑。
その中心にある京都御所はまっすぐつづく端正な美しさの築地塀に囲まれています。しかし、その築地塀の一角がなぜか切込みを入れたかのように凹んでいるのです。ちょうど御所の東北の角。ここがずっと猿ヶ辻と呼ばれている理由は、遠く平安時代にさかのぼります。
御所が造営された平安時代、都では陰陽道がとても信仰され、都の東は青龍、南は朱雀、西は白虎、北は玄武によって守られているとされていました。
そして陰陽道では、北と西は陰、東と南は陽とするため、東北と南西は陰陽が反転するために鬼が出入りする方角として、東北の角を表鬼門、南西を裏鬼門と呼んでいました。御所はその造営にあたり鬼門をさけるために美しい塀の東北の角をわざわざ凹ませて角(つの)をなくし、鬼の侵入をさける方法をとったのです。
さらにこの凹の部分の屋根裏には、御所の鬼門を守る比叡山 日吉大社の使いである御幣をかついで烏帽子をつけた木彫りの猿が鬼門封じのために置かれているのです。
しかし、この猿なぜか金網で厳重に囲まれているのはかつてこの猿は夜になると役目を放棄して、京の街を徘徊したためにずっと長い間とじこめられているのだとか。
長い歴史の都、京都には数々のふしぎがあちこちにありますが、この猿ヶ辻もそのひとつなのです。