お灸を知る・使うせんねん灸 moxaブログ

2017.10.20

ブログ

秋の日はつるべおとし

turube
秋の日はつるべ落としというコトバの通り、太陽は西に傾くと、あわただしく沈んでゆきます。
その秋の日がまもなく山にかくれようという一瞬のきらめきのような日ざしが庭のみどりの葉にスポットライトのようにあたってみどりの色をあざやかにうかびあがらせています。

そういえばあっという間に沈む秋の夕日をあらわすコトバに「つるべ落とし」という季語がありますが、今では井戸もあまり見かけなくなり、あったとしてもモーターで水を揚げるためにつるべなんてめったに見かけません。
かつてどこにでもあった井戸の上には滑車がつるされ、そこに太いロープをかけ、その両端に木のつるべをとりつけ、水をくむ時はつるべを井戸の中に落とすとカラカラ滑車が廻り、スーッと井戸の底にまで落ちるところから秋の日ぐれるあわただしさをあらわす季語となったのです。つるべ落としはどこにでも井戸があり、日々の暮らしに欠かせないものであった時代に生まれた季語なのです。
季節をあらわす季語の中には「つるべ落とし」もそうですが、本来の意味がわからなくなったものも昨今増えてきています。
コトバの大きな役割は人と人の間のコミュニケーションツールなのですから、時代とともに消えていくコトバがあり、又新しく生まれるコトバがあるのは当然のことなのです。

「春はあけぼの、夏は夜、秋は夕ぐれ・・・」
いとおかしと清少納言が「枕草子」に記したのは今から1000年以上も前のことですが、百人一首にも芭蕉の俳句にもそして童謡にも秋の夕暮れは取り上げられ、今に生きる私たちも秋といえば秋の夕暮れをおもいうかべるのは、日本人のメンタリティのなせるわざなのかもしれません。

ページの最初に戻る