梅雨晴れのお日さまにたくましく育った稲が誇らしげに葉を伸ばしています。
五月に植えられた時の早苗はいかにも頼りなげに数本づつが一株となって五月の風にゆれていたのが、今は梅雨を迎え、たっぷりの水の中で日一日たくましく育ち、泥の中にしっかり根をはってきました。
稲の茎は一日に5センチも成長します。そして成長とともに茎の根本から新しい茎が次々と生れ2〜3本だった一株は20本をこえるほどにまで増え、夏を迎えるにふさわしい姿になっていくのです。
この一本の茎から次々と新しい茎が生まれることを「分けつ」と呼びますが、この分けつによって、一本の稲、すなわち一粒の稲が一年で2000粒をこえる場合もあるほど稲はたくましく生長するのです。
この稲の生長に欠かせないのが水。
どんな植物も生長するためには水と土と光合成のための太陽が必要ですが、稲は特にたくさんの水が必要です。
稲が育つ田んぼは水田と呼ばれる通り、春から夏にかけて稲はずっと水の中に根を下ろして成長します。
稲は外気温の変化に弱い植物ですが、田んぼを満たした たっぷりの水は日中に温められて一定の温度を保っているため、天候不順などによる急激な冷え込みにも稲を守ります。又、土を活性化し、栄養分をたんぼのすみずみにまで行きわたらせるなど、稲の生長のすべてを支配しているのも水なのです。
だから水管理のための毎日の田まわりは農家にとっては欠かせない仕事、米という漢字から生長まで八十八手も手間がかかるといわれる米づくりの中でも水の存在は特別なのです。
今日も空の一角から黒い雲がおおいはじめてきました。蛙の合唱があちこちで始まり、雨を待つ稲は大喜びのようです。