春一番に花をつけるところから「花の兄」の別称もある梅は、奈良時代頃に中国から伝えられましたが、中国では紀元前からすでに栽培されていて、その花の美しさは数多くの詩歌として多く詠まれ、その実は食用に、薬用にと、とても大切な植物でした。
日本へは遣唐使によって奈良時代 薬用として伝えられたとも、それ以前に梅の実を燻製にしたまっ黒の「鳥梅」(中国読みでウメイ)がもたらされ、このウメイが日本語の梅になったともいわれています。
日本に伝えられた梅の花はたちまち万葉人の心をとらえました。
当時の貴族は唐風文化を取り入れることに積極的だったこともあって、中国文学で主要な位置を占めていた梅が日本で詩歌の題材に多くとりあげられたのです。
菅原道真の飛び梅の故事以来、梅は天神の神木とされたこともあって、梅は日本人にとって特別のものとなったのです。
この当時の梅は白梅だったのですが、平安時代になると紅梅が日本にもたらされ、またまた梅の人気は高まったのです。
清少納言は枕草子に「木の花は、濃きも薄きも紅梅」と記しています。
そして平安時代には、遣唐使の廃止などもあって唐風文化へのあこがれがさめたこともあって、いつしか花といえば「桜」となったのです。
しかし寒中にいち早く春の訪れを知らせてくれる梅の存在は、今も私たちのくらしの中でやはり待たれる大切な花なのです。
梅一輪一輪ほどのあたたかさ 嵐雪