京の街中とはおもえない深い森「糺の森」がようやく明るくなる土用の早朝、森の奥深くにある世界遺産 下鴨神社では夏の神事のひとつ 足つけ神事がはじまります。
足つけ神事は、下鴨神社の境内に数ある末社のひとつ「御手洗社(みたらしのやしろ)」に無病息災をお願いする行事。
御手洗社の井戸から湧き出る清水が流れ込む御手洗池は京都三大祭のひとつ、葵祭の斎王代が禊ぎを行う神聖な池なのですが、土用の丑の日を中心にした5日間に限り、だれもがこの御手洗池に入り、池の中を進んで御手洗社に燈明をお供えし無病息災をお願いできる行事なのです。日中から夜にかけては浴衣姿の女性や観光客も増えるところから池に入るだけで時間待ちになることもしばしばというにぎわいかたなので、毎年お詣りの人たちは夜明けを待って、こうしてやってくるのです。
ぬいだはきものを入れた袋とローソクを手に、御手洗池に足をふみ入れると森深くから湧き出る清水のつめたさは、かなりのもの、一瞬頭までキーンとします。
あちこちでつめたさに悲鳴があがります。
ひざ近くまである水の中をジャブジャブ進む波で池の底の玉砂利がゆらゆらとゆれて見えるほどの透明度は池とは名ばかりで豊かな水がたえず流れているからです。
水中を進む水音が、周囲の森からきこえる野鳥の声をバックに池にひろがります。
そして燈明をあげ、おまいりがすんだら井戸から湧き出たばかりの御神水をいただくのが足つけ神事なのです。