お灸に使われる「もぐさ」が「印泥(いんでい)」にも使われています。
「印泥」とは、印鑑を押す時に使う朱肉のルーツ。
書とか絵画などに落款(らっかん)として押すときなどに使います。
━「もぐさ」が「印泥」に使われるわけ
「印泥」は、中国で古くから賢者の石と呼ばれる美しい朱色の鉱物 辰砂(しんしゃ)の微粒子と、「もぐさ」を粘りのある油で練り合わせたもの。
お灸の「もぐさ」をさらに精製を重ねた「もぐさ」を使うことで、朱色がほどよい量だけ印につくため、印を押したときの印影がディテールまで鮮やかに出るのです。
普通の朱肉と違って油で練り上げられているため、粘りがありペースト状なので「印泥」の名で呼ばれてきたのです。
━「印泥」の歴史
中国では古くから書や絵に押す印にこだわりがあり、古代中国で生まれた篆書体(てんしょたい)と呼ばれる文字を美しくレイアウトし、石や木などに彫り「印泥」を使って押してきたのです。
篆書体の繊細な文字をきれいに再現するためには、「もぐさ」は欠かせないのです。
━篆書体という文字
この篆書体と呼ばれる文字は、日本で最古の印といわれ北九州で発掘された漢の皇帝から送られた純金の金印に彫られている「漢委奴国王」の書体がそれで、古くは政府などの官印としても使われてきました。
今も日本では、パスポートの表紙の日本国旅券の文字は篆書体です。
「印泥」を使って押された篆書体の、鮮やかな朱色の文字の美しさは書や絵を引き立てる役割も果たしていたのです。
━燃えずに働く「もぐさ」
お灸の「もぐさ」の原料「よもぎ」の語源は、「善燃草」よく燃える草が語源といわれてきました。
お灸のためにじっくり燃える「もぐさ」は、燃えることなく書の世界でも役立っているのです。