お灸を知る・使うせんねん灸 moxaブログ

2022.09.02

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浜焼き鯖


太い竹串でつらぬかれた大鯖は時間をかけて素焼きにした浜焼き鯖。数えている間にも傷んでくるといわれる足の早い鯖のおいしさを閉じ込めて京に送り届ける手だてとして生まれた食の知恵です。

古来より若狭国と呼ばれてきた福井県小浜は皇室や朝廷に海産物を献上する御食国(みけつくに)として、伊勢、淡路と並んで大きな役割を果たしてきました。
日本有数の良好な漁場の若狭からは塩・あわび・うに・鯛・鯖などが飛鳥時代から送られていた荷札の木筒が藤原京や平城京から多く出土していることからも若狭国と朝廷との結びつきは深いのです。

平安時代になりやがて都が京に遷都されてからは、いっそう若狭国は御食国として重視され、若狭かれいをはじめ、ぐじ、鯖などさまざまな海産物が若狭ものと重宝され「京は遠くても十八里」といわれながら、鯖街道を通り京へと運ばれてきたのです。
しかし、十八里の距離はいくら徹夜で走っても運ぶには遠く、そのために魚は浜で加工されて運ばれました。ぐじと呼ばれる甘鯛そして鯖は浜で塩をして京まではこばれている間にちょうど身がしまり、おいしくなるというおまけまで生まれたのです。
そして鯖の保存手段として生まれたもうひとつの方法が浜焼き鯖。新鮮な鯖の内臓をていねいにとりのぞき丸ごと太い竹串をさして時間をかけて強火の遠火でじっくり焼くことで鯖の水分や脂分がほどよくぬけて鯖の旨味が増すという加工法なのです。

本来運搬の手段として生まれた加工法は浜塩の鯖やぐじにしても浜焼きの鯖にしても、ただ運搬するためだけにとどまらず、その塩加減、焼き加減のたくみさで新しい味を生みだすところは御食国としての若狭の食文化の奥深さが感じられます。

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