めはりずしは三重県から和歌山にひろがる熊野地方の郷土料理。
熊野地方は山間部が多く、高菜の栽培に適しているところから古くから漬物用に高菜が育てられてきました。
昼夜の寒暖差が大きい熊野の高菜は葉が大きく、少しピリッとした辛味のあるのが特徴、その辛味と塩漬けにした高菜の塩味がめはりずしのおいしさを演出しているのです。
今ではめはりずしの専門店や道の駅ではほどよい大きさのめはりずしがほとんどですが、本来は直径10センチほどもある大きなおにぎりを塩漬けにした高菜の大きな葉でくるんだだけのめはりずし、寿司と呼んでいますが、いわば高菜の葉でくるんだおにぎりなのです。
古くから農作業や山仕事のお昼のお弁当としてどこのお家でもつくられていました。
朝、炊きあがあったごはんを大きなおにぎりにして、塩漬けの高菜の葉でつつんだだけ、時にはおにぎりをつつむのに使いにくい高菜の軸の部分を刻んだ具が入っていることもありますが、どこまで食べてもごはんだけというのが本来のめはりずし。
浅漬けの高菜や古漬けのしっかりした高菜の少しピリッとした辛味と塩味がごはんにしみこんでちょうどお昼には食べ頃のおいしさになるのです。
そのおいしさは目を見張るばかりが名前の由来になったといわれるのもうなずけるおいしさ。
もうひとつの名前の由来は、大きなおにぎりにかぶりつく時、目を見張るほど大口をあけるところからとも伝えられるめはりずし。
さらに木の国熊野は古くから林業が盛んで、山深いところで伐採された木は筏に組んで、筏師の手で川を下ります。
その筏師がゆれる筏の上でも片手で食べやすいようにと生まれたとも伝えられています。
いわば熊野のソウルフードめはりずし、そのおいしさは農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。