お灸を知る・使うせんねん灸 moxaブログ

2024.06.07

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善燃草「よもぎ」


━「よもぎ」の葉と綿毛

春になると、いち早く芽を出す「よもぎ」は、その栄養と香りを味わうために草餅の材料となります。
この「よもぎ」の葉の裏が白く見えるのは、びっしり細い綿毛で覆われているからです。

はるか昔、中央アジアの乾燥地帯で生まれたとされる「よもぎ」。
砂漠の乾燥による水分の蒸発を防ぐために、「よもぎ」の葉裏にロウ成分を含んだ綿毛を身につけたと言われています。

植物の多くは、葉の裏側に無数にある「気孔」から空気を取り込み、その中の二酸化炭素(CO2)と、根から吸い上げた水(H2O)を材料に、光合成によって糖分をつくり出します。
そして、同時にできた酸素(O)を「気孔」から放出します。
このために「気孔」は、必要に応じて開いたり閉じたりします。

しかし、昼夜の温度差が大きく、乾燥する厳しい気候条件の中で生きてきた「よもぎ」の「気孔」は、葉裏の綿毛によって、その働きが守られているのです。

この綿毛を顕微鏡で見てみると、毛が途中からT字型に分かれているのがわかります。
T字型の形状によって綿毛がより密になり、乾燥から「気孔」を守っているのです。

「よもぎ」を餅につきこむと、餅がいっそうコシのある食感になるのはこの綿毛があるからであり、風味もよくなります。

━「よもぎ」から「もぐさ」

この「よもぎ」の綿毛は、砂漠の乾燥の中で生きぬくために、ロウ成分まで身につけています。

お灸に使われる「もぐさ」は、乾燥させた「よもぎ」からつくられます。
ロウ成分を含んだ綿毛によって、「もぐさ」に火をつけてもパッと燃えあがることはありません。

その理由は、ローソクと同じように、火をつけると、炎の大きさがずっと一定の大きさで燃え続けます。ロウ成分につつまれた綿毛1本1本がローソクと同じように安定した燃え方をするため、「もぐさ」は一定の温度を保ち、ゆっくり燃えることからお灸に最適なのです。

「よもぎ」の名前の由来に「善燃草」があります。
これはパッと燃えるのではなく、お灸に使う「もぐさ」の原料として、その燃え具合がいいことから名づけられたとも言われています。

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