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2025.11.14

ブログ

冬支度 

朝の空気がすこし白くなり、冬の足音がそっと近づいてくる11月。
庭先の柿はぽってり色づき、鳥たちがひと口ずつ味見にやってきます。
季節は二十四節気の「立冬」を迎え、暦の上では冬のはじまり。

寒さが深まりはじめるこの時季、日本では昔から暮らしを整える「冬支度」が始まります。
庭木を守る冬囲い、こたつを出して暖をとる準備、味噌や漬物の仕込みなど、冬を心地よく過ごすための知恵があちこちに息づいています。

━ 冬囲い(ふゆがこい)

石川県・兼六園の「雪吊り」

北風や雪の重みによって庭木が傷むのを防ぐため、藁を巻いたり縄で枝を支えたりする、日本各地に伝わる冬支度のひとつ。
その起源は江戸時代ともいわれ、大名庭園や武家屋敷の庭で植物を守るための庭師の知恵として受け継がれてきました。とくに有名なのが、石川県・兼六園の「雪吊り」。湿った雪でも枝が折れないよう、何十本もの縄を放射状に張り巡らせる姿は、冬の訪れを告げる風物詩として親しまれています。

━ こたつ開き
黒川真道 編『日本風俗図絵』第5輯,日本風俗図絵刊行会,大正3-4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1266538 (参照 2025-11-13)

冬の入り口に行われてきた「こたつ開き」。現代では気温に合わせて自由にこたつを出しますが、昔の人々は季節の節目と決まりを大切にし、こたつを使い始める日をきちんと定めていました。

こたつの歴史は古く、室町時代には囲炉裏に火の上に台を置き、衣服をかけて足元を温めていたのが始まり。
その後、江戸時代にかけて現在の姿へと近づき、綿の布団が普及するにつれて、こたつは庶民の暮らしにも欠かせない暖房具となりました。

こたつを出す日は、旧暦10月の「亥の日」と決められていました。つまり現在の11月、その月にめぐってくる日の十二支の亥の日が「こたつ開き」とされていたのです。
12日に一度めぐってきますが、武家は月の最初の亥の日、町人は二番目の亥の日とされ、身分によって日が異なるほど細かな決まりがありました。亥は火を避ける象徴とされ、陰陽五行(木・火・土・金・水)でも“水”の性質が火を鎮めると考えられていたことから、この日からこたつを使い始めると一年を無事に過ごせると信じられていたのです。

━ 保存食づくり(味噌・漬物など)


冬に備えて食材を仕込む習慣は、古くは平安時代・鎌倉時代の頃から続く日本の暮らしの知恵です。寒さが厳しくなると生鮮品が手に入りにくくなるため、大根や白菜を塩や麹と合わせ、長く保存できるよう整えてきました。
特に11月は気温が安定し、発酵がゆっくり進むことから味噌仕込みや漬物づくりに最適とされ、武家屋敷から農家まで多くの家庭で冬支度として行われてきました。

その後、ぬか漬け、たくあん、粕漬けなど地域ごとに技が受け継がれ、郷土の味として育っていきます。仕込みが始まり台所に広がる発酵の香り、保存食づくりは寒い季節を乗り越えるための大切な準備であり、暮らしを支える先人の知恵そのものです。

日本には、季節とともに暮らしてきた先人の智恵が数多く受け継がれています。これからのブログでは、季節の知恵やならわしをお届けしていきます。
季節を楽しみながら、無理なく“季節の養生”を日々の暮らしに取り入れてみてください。せんねん灸では、各二十四節気に合わせたおすすめのお灸ポイントも紹介していますので、ぜひ季節の養生にお役立てください。

━「立冬(りっとう)」の養生
https://www.sennenq.co.jp/news/ritto_251107/

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