お灸を知る・使うせんねん灸 moxaブログ

2023.05.19

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もっと遠くへ 「もみじ」が手に入れた 翼果(よくか)


「若もみじ」の美しい季節になりました。
5月の今頃、ひと雨ごとに若葉色から緑色へとその色を変化させる「若もみじ」の美しさは格別。
葉の一枚一枚がそれぞれの今を主張するかのように緑色のグラデーションとなっています。
その若葉の中に見えるのが翼果。
「もみじのプロペラ」などとも呼ばれるユニークなカタチの「もみじの種」なのです。

植物は自分で住む場所を選ぶことができません。
芽を出したところが一生の住処(すみか)。
そのためにもっと遠くへ行きたいと
花粉を風に託して飛ばしたり、昆虫に甘い蜜と引き換えに花粉を運んでもらったりします。
種にイガイガをつけて動物や人にくっついて遠くをめざす植物もありますが、
「もみじの種」はもう少しアイデアあふれる仕組みを生み出したのです。

4月5ミリほどの目立たない小さな花をつけた後に出てくるのが翼果。
小さな翼が左右に2枚、その翼にそれぞれ1つの種が入っています。
翼果は夏をこえ、枯れて乾燥して軽くなってくると飛び立ちます。
2枚の翼は別々となり、その根元に入っている種の重さを利用して
ふうわり、くるりと回りながら、風にのってできるだけ遠くを目指して旅立つのです。

数ある植物の中で、なぜ「もみじ」が種に翼までつけたのかはわかりません。
常にその美しさをたたえられてきた「もみじ」は
それでもなお自分の美しさに気づいてほしい、見てほしいとの思いが強かったからでしょうか。
長い歴史の中で日本人に愛され続けてきた「もみじ」には
語りつくせないロマンが宿っているのです。

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