さまざまの事思い出す 桜かな 芭蕉
桜ほど日本人に愛され親しまれてきた花はありません。
桜が咲く四月はちょうど入学式や入社式など、人生のターニングポイントと一致することもその理由とする人もいますが、立春から少しづつ春に向けて、変わりつづけてきた気候がここにきて、一気に温度も光もガラッと春へと変わるそのシンボル的な存在が、桜ということも、桜が親しまれてきた理由なのかもしれません。
その桜が今年は少し異常です。
今年の桜の開花宣言は、東京が日本で最も早く先週でしたが東京より南の鹿児島はやっとおととい開花宣言、まだほとんどの桜はツボミも固いままとか。
桜守16代目の作野藤右衛門さんによると「冬がなくなったから、さくらの花にとって冬の間の営みができなかったことが原因」だそうです。
桜は春暖かくなったから咲くものと思いがちですが、さくらの開花のメカニズムはそんな単純ではないのです。
桜は春、花が終わると夏から秋にかけてまだ暖かい間に、春に花を咲かせる花芽をつけます。
そして冬を迎えると一旦休眠に入ります。そして最冬のきびしい寒さが一定期間つづくと、目をさまします。
桜が休眠から目を覚ますこの「休眠打破」から、桜は日一日暖かくなるのをカウントして春を迎え花を咲かせるのです。
冬はあまり冬らしくなかった気候が今年の桜の異変の原因なのだそうです。
桜は四季のある日本でこそ美しい花をつけますが、常夏の土地では美しい花は咲かないそうです。
日本人が桜にことのほか思いをよせるのは、桜と同じようにきびしい冬をすごし、春を心持ちにしてきたこともきっと大きな理由なのかもしれません。