春分が近づいてデパートは今すっかり桜色に変わっています。
春を彩る京生菓子が銘店のウィンドウに並んでいます。
なかでもいかにも春らしいのが、きんとん。
きんとんというのは餡玉に、色づけした別の餡を裏ごしにして、そぼろ状になった餡を餡玉にくっつけただけの至ってシンプルなお菓子。それだけに餡の味そのもの 餡の香など、一軒一軒のワザと誇りがこめられていて見ただけでも、思わず食べ比べてみたくなる美しさです。
そして京生菓子に必須なのが銘。
花霞、都の春、うららか、宵桜など、そえられた銘をきくと
なるほどと、きんとんの持つ世界がすっとひろがってきます。
目で見て美しく銘をきいて耳で楽しみ、味わっておいしくという京生菓子にとって
銘の役割はとても大切とされてきたのです。
今ではデパートの銘店にはそれぞれのお店の顔として季節季節に必ず銘がそえられて並んでいますが、本来生菓子というのはその名前の通りあらかじめお客さんの注文をきいて、その趣向をお菓子屋さんがかたちにするもので、銘もその時につけられ、すべてが一回限りの注文生産そのものだったのです。
きんとんのようなシンプルなお菓子はそえられた銘によって一気にイメージが大きくふくらむ楽しさも味わえるもの。
京生菓子は四季の移り変りが日々のくらしの中に生きている京都という街でこそ生れ育ってきたものなのです。