雪まろげは京の干菓子の中でも人気の銘菓です。
和三盆のほのかな甘さ、淡く淡く一斤染めの紅のような色合いの珠と白い珠のカタチの絶妙な手づくり感がいっぱい。
口に含むと、あの降りたての雪のフッと吹けば消えるような軽やかさをおもわせる和三盆のおいしさが口にひろがります。
お干菓子とは薄茶のためのお菓子です。
その色とカタチが自然をあらわし、目で舌で五感で味わうもの。決してつくりすぎず抑制のきいた美しさこそ、求められるのです。
雪まろげのまあるーい雪はまさに雪月花を愛し自然とともに生きてきた日本人の感性から生まれた雪なのです。
今日、私たちが雪のカタチというと六角形のいわゆる雪の結晶、かのベントレーの顕微鏡写真をもとにしたリアルなイメージの雪が最もポピュラーです。
ところがそのベントレーにさかのぼること100年。
日本ではなんと1800年のはじめに、下総国古河の雪の殿様 土井利位は顕微鏡で見た雪の結晶のスケッチを80枚も残しています。利位の描いた雪のスケッチは雪月花を愛した日本人の美意識から時には大胆にデフォルメされた雪もたくさんあります。利位のこのスケッチは後に木版画になって「雪華図説」として出版され雪の意匠として以来、家紋をはじめさまざまな分野でひろく用いられてきました。
雪まろげもまた長い時間をかけてみがきぬかれてきた日本人の美意識から生まれたひとつなのです。