本物の蕪と見紛うばかりの蕪の姿に、いよいよやってくるきびしい冬の訪れが伺われます。
これは今の季節、初冬の京菓子です。
蕪の銘は「里の冬」
京菓子は味だけでなく、その色やカタチ、題材に京都の風土をさりげなく盛りこみ、すべてをあわせて楽しむものなのです。
だから、目で舌で言葉で味わうといわれる京菓子には銘は大切な役割を果たしているのです。
里の冬、一面霜が降りた畑から掘りおこして、冷たい水で洗ったばかりのピンとした蕪のまっ白でつややかな肌は、蒸しあがった薯蕷饅頭のキメの細かさでカバー、そして蕪独得のチョロッとした細く短い根の先まで、心くばりがいき届いた細工がさりげなくリアルです。
そして切り落としたばかりのようなみずみずしい茎のみどりは京菓子の独得のこなしで、リアルに表現しています。
まさに今が旬の千枚漬に使う重さ2〜3キロもある、聖護院蕪をぐっとかわいくしたといったところです。
小さなかわいい姿でありながら、さまざまな景色まで、おもいおこさせる京菓子の伝統のワザ。
茶の湯の隆盛とともに高度に洗練されるなか、京菓子は季節を大切にして銘にまで心をくばる世界ですが、暖冬がつづき、四季の感覚が失われるなか、京菓子も今、その方向が問われてきているそうです。
来週は事始めとあって錦市場には京のおせちに欠かせないカチンカチンに乾燥しても1mもある棒だらが並んでいます。
近頃では棒だらを一匹丸ごとではなく、10日以上も毎日水を替えてもどしてすぐ煮ることのできる棒だらを求める人も多いようです。